ゴルフと健康 (オリムピックゴルフ倶楽部会報誌 Vol. 10より)

   脳梗塞
                           
茅園建新 (医学博士、循環器専門医、陳内科院長)
脳梗塞とは?
 脳は人の臓器で最も重要なため多量の血液が配分されるようになっています。その為、脳には血管が網目のようにはりめぐらされ、互いに連絡しあっています。もし、主要な血管が詰まって連絡網がとだえると、血流が閉ざされ、その部分が死んでしまいます。その部分の役割により色々な障害が出てしまい、このことを脳梗塞と言います。
 脳梗塞には脳血栓と脳塞栓があります。

脳血栓症は動脈硬化性(老化・高脂血症・糖尿病・高血圧など)を原因とする事が多いですが、血管炎、膠原病や脳循環不全の状態などでも起り易くなります。
 小さな梗塞巣が複数存在する多発性小窩性(ラクナ) 脳梗塞のこともあり、この場合はもっぱら痴呆を主症状とする場合が多いものです。 脳塞栓症は心臓に出来た血液の固まりがはがれて脳の血管に飛び、急激な血管閉塞を起こすものが代表的なもので、その他、空気塞栓、脂肪塞栓などもあります。動脈硬化や高血圧は必要条件でなく、若い人にも見られ、特に心臓の不整脈(心房細動)を有する人にしばしば起こり得ます。
 それ以外にも脳の酸素不足の状態になると脳梗塞になります。たとえば、極端に血圧がさがって脳へ流れる血液の量が不足した時、頚動脈に狭窄があってそのために脳へ流れる血液の量が不足した時、頚をしめた時(他殺・自殺)、喘息発作で呼吸が出来なくなったとき等でも結果は同じです。

症状は?
 詰まった血管の場所に依りますが最も一般的なものは次の様なものです。片麻痺(半身が動かなくなること)、失語症(言葉がしゃべれなくなること)、意識障害等です

前ぶれはあるの?
 急に起こってしまうものもありますが、本格的な発作を起こす前に「前ぶれ症状」を見る場合もあります。一過性脳虚血発作と呼ばれ、小さな血栓が脳の血管に一時的に詰まり脳梗塞と同じような症状が現れるものです。しかし、すぐに血流が再開するので持続時間は 2〜15分程度で症状も消えてしまいます。
  前ぶれ症状としては、左右どちらかの手足に力が入らない、動かせない、足がもつれる、体の左右どちらかがしびれる、熱さや痛みなどの感覚がおかしい、めまいが起き、立てなくなる、ろれつが回らない、言葉が出てこない、物が二重に見える、視野の半分が欠ける、片方の目が見えない、飲食に際し飲み込めなかったりむせたりする等があります。これらの症状は詰まった場所に因ります。

脳梗塞かな?と思ったら
  慌てずに状態をよく観察して下さい。そして,先ず、主治医に相談して下さい。主治医が見つからないときは救急車を呼んで出来れば脳神経外科のある病院に運んでもらって下さい。

診断はどうやってするの?
 内科医か脳神経外科医で有れば殆ど直感的に診断できますが、確定的には神経学的検査とCT、脳血管造影で詰まった血管を確定します。

治療法は?
 治療の基本は脳のむくみを早くとることで、内科的には点滴注射や、飲み薬で脳のむくみをとります。むくみが取れない場合は外科的治療が必要となる場合もあります。減圧術のほか、頭の皮膚を走る動脈と脳の表面を走る動脈をつなぐバイパス手術などがあります。また、早い時期で有れば血栓溶解剤で血栓を溶かす方法もあります。
落ち着くと梗塞で働かなくなった脳の変わりに他の部分がその働きをするようにリハビリを行います。

予防は出来るの?
■塩分は控えめに(1日10g以内に)
■ナトリウムの排泄を促進するカリウムを多く含む食品(りんご、枝豆、バナナ、カボチャなど)を食べましょう
■血圧を下げる作用があるカルシウムを多く含む食品(乳製品など)やマグネシウムを含む食品(のり、昆布、ごまなど)を摂る
■話題のナットウキナーゼは納豆のネバリ物質に含まれる酵素で、血栓を分解し、同時にプラスミンをつくる物質を活性化すると言われています
■動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品は控えめにしましょう
■アジ、サバ、イワシなど青背の魚に多く含まれる不飽和脂肪酸をよく食べましょう
■適度な運動、日常でも積極的にからだを動かしましょう
■入浴は38〜40℃のぬるめで長湯をさけ、のどが渇いたら十分な水分補給しましょう
■太り過ぎは要注意です
■充分な睡眠と休養、ストレスを貯めない
■禁煙(たばこは血管を細めます)
■お酒は適量にし、飲みすぎないよう
■夏場の水分補給(汗をかいて脱水状態になり血液が濃くなり血栓ができ易くなる)、冬場の保暖(寒さのため血圧が上昇し易い)
■定期的な検査を心がけ、気になる症状があれば主治医に相談しましょう。

 距離を稼ごうと力一杯クラブを振ると脳梗塞を起こすことがあると言います。これは首や肩にかなり力が入った状態でクラブを振り回し、首を急にひねったために、頚椎の横を通る動脈がねじれ、傷つき、血管の壁がこぶのように膨れて、脳への血流を妨げるのが原因と見られています。

 肩の力を抜きヘッドアップしないように気を付けましょう!

  脳梗塞は予防が大切です!